いつだったか。
遠い昔、幼い頃
すごく綺麗な歌声を聴いた。
天使のような
綺麗、美しい、癖のない、割れているようで割れていない、耳に残る声
聴き惚れた。
耳に残るは君の歌声
歌っていたのは僕と年が同じくらいの少女だった。
聞き取れない歌詞
他国の言葉だった。
「君の歌ってる曲、何語なの?」
そう問うと少女は拙い英語で言った。
「ごめんなさい。私、英語よく分からないの」
外人か・・・って思った。
確かに歌ってる曲は他国の歌詞だったし
その少女は、黒い髪、黒い瞳、黄色肌を持ち合わせていて
僕の周りにいるタイプの人種ではなかった
・・・今思うとその子は東洋人だったのかもしれない。
少女は僕が黙るとまた歌いだした。
聴き入った。
本当に綺麗な歌声だった。
彼女にはそれっきり逢わなくなった。
僕は大人になるまで彼女の存在を忘れていた。
あの頃は確かに幼かったし、
印象的だったとはいえ、一度しか逢ってない。
そんな彼女をずっと覚えているはずもない。
大人になった今
たまたま彼女を思い出した。
こうして覚えているはずもない少女をふとした瞬間に思い出すのはきっと、
忘れてなかったからだろう
頭の片隅に彼女が歌っている光景が残っていたからだろう。