♪男は狼なのよ、気をつけなさい

年頃になったなら、つつしみなさい

羊の顔していても心の中は、狼が牙をむく、そういうものよ

 

 

 

 

 

 

 

バレンタインにS.O.S

 

 

 

 

 

 

「もう2月だね」

 

リーマス・ルーピン教授自室でお茶会を開いている時のことだった

ルーピンは唐突にそんなことを言い出す

は口につけていたカップをそっと机に置く

 

「そうですね。早いもんですよ。月日が流れるのは」

そういって窓の外、遠くを眺める

 

は5年生だ

なのになんだろう、この落ち着きは

ババガキとでも言えそうな、そんな感じだ

まるで縁側でお茶を飲むお婆ちゃんのような・・・

――まぁ、そんなことはどうでもいい――

ルーピンは思い、に会話を投げつける

「ねぇ、2月といえば・・・?」

「そうですね・・・2月といえば雪も積もりに積もって寒いですよね。風邪引かないように気をつけなくちゃ」

雰囲気だけでなく、行動だけでなく、言うこともなんとなく、長い人生を歩んできた人間のようだ

「そうだけど・・そうじゃなくて。ほら、2月の行事っていえば?」

「んー・・・そういえば東の島国は2月11日が建国記念日だとか」

「へぇ・・そうなんだ・・・じゃなくて!!もっと他に・・?」

「ちなみに2月3日は節分と言って豆をまくことにより、前年の邪気、曰く鬼ですが、それを全て祓うという宗教じみた行事も行われています」

「・・・詳しいね・・・」

「そして2月22日は夫婦の日です」

「あのね、。私が聴きたいのはそういうことじゃなくて」

ルーピンは苦笑しながら言った

――この娘はとぼけてるのか、それとも天然なのかイマイチわからないところがある――

「ああ、そういえば2月といえば色めき立つ行事もありますよね」

その言葉にルーピンは素早く反応した

「うん?それで?その行事は?」

「今日、2月14日は・・・」

「うんうん!」

 

「チョコレートの日、ですよね」

 

「うんうんうん!!そうそう、チョコレートの・・・って、え?」

「ほら、日本ではバレンタインは異性に、主に女性から男性へですが、チョコを送るという習慣があるんです」

「チョコを・・・?」

「ええ。送るついでに気持ちを伝える、いや、気持ちを伝えるついでに送るのかな・・・?まぁ、そんな感じの行事があるんです」

「へぇ」

「でもそれってチョコレート会社の陰謀ですよね。大儲けしようとしているのがまさにバレバレで」

苦笑しながらルーピンはもう冷めてしまった紅茶を啜った

「でも・・・それが気持ちを伝えるチャンスをくれるって考えれば、チョコレート会社の方も粋なことを考えたものですよね」

――そういう行事がなければ気持ちを伝えることすら出来ない女の子もいっぱいいるんですから――

そう言っても紅茶を啜る

はどうだい?」

「何がです」

「そういうチャンスがあるとして、今私達が付き合ってなかったとして・・・君は私に・・・」

「伝えますよ」

ルーピンの言葉を遮るようにきっぱりとは言った

「どうしようもなく好きなんですから・・・伝えなかったら前進も後退もないでしょう?誰かに取られてしまうのも絶対いやです」

落ち着いた、天然のおっとり系の彼女からは考えられないくらい、

年頃の女の子のようなセリフが出てきてルーピンは驚いた

「私、もやもやしてるのは嫌いなんです」

小声で、それでもぴしゃりと言い放つ

 

ルーピンは、当初目的があった

普段素っ気ないというよりは自分に無関心のようなから

バレンタインだからという理由で「好き」「愛してる」などと甘い言葉を言ってもらうことだった

でも、何だか先ほどの言葉を聞いただけで随分と満足した気がする

ルーピンはに気付かれないよう、下を向き小さく微笑んだ

――多分、年に似合わず頬が少し紅くなっているんだろうな――

そう思うと苦笑も漏れる

「ところで先生」

突然、がルーピンを呼ぶ

その声は先ほどとは違い、いつもと同じおっとりと落ち着いた口調だった

「バレンタイン、何が欲しいですか?」

にっこりと可愛らしい、年相応の笑顔でルーピンを見つめる

「お望みであるならば、『私』を差し上げても宜しいのですが?」

「!?!?!?」

さらりと笑顔でとんでもないことを言ったをルーピンは口をぱくぱくさせて見つめた

今、なんて言った?

・・えっと・・・」

「東に島国にとても面白い曲があるんです」

慌てるルーピンを他所には突然、そんなことを言った

「S.O.Sっていう曲なんですけど。歌いだしが『男は狼なのよ、気をつけなさい』って」

「え・・・・?」

「それに『羊の顔していても心の中は狼が牙をむく、そういうものよ』」

がにっこりと微笑みながら歌詞を詠唱する

「『この人だけは大丈夫だなんて、うっかり信じたら駄目駄目駄目駄目よ』って・・・」

の言った歌詞を聞いてルーピンは唸った

「・・・。それ、『これはルーピン先生のことを言っているのよ!!』って聞こえるんだけど・・・」

「はい。だって羊のように大人しそうな顔してるじゃないですか、先生は。だけど結局男だから狼になるんですよね、きっと?

この曲によって私は男という生き物が何たるかなどを色々学びました。」

自慢顔をするわけでもなく、先ほどと変わらず落ち着いた笑顔で言う

「だけど先ほど言ったじゃないですか。『お望みであるならば、私を差し上げても』って。私は先生を信じてます。

でもいつかきっと『大丈夫』だなんて言ってられなくなります。それでも相手が先生ならいつ何が起こってもいいと思ってますよ」

 

――ああ・・・それってそれって・・・――

 

。それは・・私は今夜、狼になってもいいということかい?」

「直球に言えば、抱いてもいいですよ、ってことです」

またこの娘はさらりとそんなことを・・・

ルーピンは苦笑し、身を乗り出しの唇にそっと自分のそれを重ねた

「バレンタインのプレゼント、ということで・・・」

「人生最高のプレゼントだよ」

 

 

 

 

♪うっとりするような夜についつい溺れ

そんな気になるけれど考えなさい

瞼を閉じたら負けよ、背伸びをしたら何もかもおしまいよ、そういうものよ

 

 

 

・・・負けてもいい、お終いでもいい、相手が愛したこの人ならどうなったっていい

私はそう思いますよ、ルーピン先生

 

 

 

 

 

★End★

 

 

 

 

☆言い訳☆
中途半端にもやもやしながら完結ー!!!!!!
これもフリーです!!
何だか全然変な話でまるで前後が繋がってませんけど・・・(汗)
それでもフリーなんで、欲しい方は是非どうぞ・・・・多分、いないんだろうけど・・・(小声)